デジタル絵の可能性

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箱根のポーラ美術館へ行ってきました。

 
クロード・モネの『睡蓮』や『睡蓮の池と日本の橋』は写真で見るのと直接見るのでは迫力が違いました。彼の作品には、絵の具の厚みや質感が生み出す立体感があり、単なる画像データで表すことが難しい「モノ」としての価値を持っていることが分かりました。

 

この展示で感動する一方、デジタル絵の可能性について考えました。昨今ではデジタル絵に物質的な価値を付与する試みが登場しています。例として、
・ 一枚の絵を何層かのレイヤーに分けて構成・印刷し、立体構造にする方法(作家でいうとPALOW.さんやリックさんなど)
・ 3Dプリント技術を用いて絵の表面に凹凸を持たせ、アナログのような質感を表現する方法(taikiさんなど) …など

 

後者を解説します。こちらは、イラストの2Dデータと、凹凸を設計した3Dデータを組み合わせて印刷します。これにより、デジタルで作った作品でありながら、絵の具で描いたような凹凸をもつ作品ができます。
デジタルによる立体作品の長所は、アナログ作品よりも緻密に凹凸を設計できる点です。

 
一方で、絵を描く瞬間の筆捌きや強弱など、作家の息吹を筆触として立体的に残せるという点ではアナログ作品の方が長けています。
現状、上記のようなデジタル制作は絵のデータと3Dデータを別の工程で作るため、アナログ作品のように瞬間の筆捌きを立体的に残すことは難しいです。

 

そこでこれから期待されるのは、アナログの長所を兼ね備えたデジタル制作の技術です。例えば、描画時の筆圧をソフトが検知し、それに応じて印刷時のインクの盛り量を決定するといった技術が登場すれば、アナログのようなダイナミクスとデジタルの精密さの二つの長所を持つ絵が生まれるかもしれません。

 

ただし、仮に将来このようなハイブリッドな技術が登場したとしても、アナログでの制作が廃れることはないと思います。つまり何が言いたいかというと、作家と鑑賞者が何を「価値」とするか、という選択肢が技術の進歩によって広がりつつあるということで、個人的にはとてもワクワクするなあ、というお話でした。