今回の記事はあまりITや業務と関係ないのですが、ぜひ知ってほしい言葉があります。
それは中国の古典である『老子』にある言葉で、以下のような言葉です。
Wikiquote『老子 (帛書本)』から引用。
為無為 事無事 味無味 大小多少 報怨以德圖難乎
天下之難 作於易 天下之大作於細 是以聖人冬不為大故能必多難
是人猷難之 故終於無難
この言葉については解釈が分かれると思われますし、私自身門外漢なので上澄みの俗流解釈しかできないのですが、ここでは、「本当の『道』を知った聖人というのは大きな問題に対処するのではない。大きな問題は小さな発端から出てくるのであり、そのため小さな問題を先ず解決することで、おのずと大きな問題にも対処できる」というようなことを述べているのだと考えます。
一般的に、大きな課題や困難が発生した際、それに対処して課題を解決に導くことができるような人は、優れた能力を持っている人物だとみなされると思います。しかし、本当に優れている人というのは課題や困難が小さなうちに対処して解決するので、その活躍は決して目立つものではないのですが、大きな課題や困難を未然に防いでいるという点でこちらも優れた手腕を持つのではないかと感じます。老子特有の逆説ですね。
勿論、何らかの緊急事態が発生して対処せざるを得ないという状況が発生するのは、ITの現場でもありますし、その対処能力も評価される必要があると思います。しかし、大仰なことをしない代わりに、日々着実に正確に、将来に問題が発生しないように問題を小さなうちから潰していくような人も、同時に評価される必要があると思います。
ドラマでも映画でもドキュメンタリーでも、「他の人の目に映える華やかな活躍」というのが題材とされる世の中ですが、「問題を問題とさせないように頑張る人」の仕事はあまり正当に扱われていないような気がします。
プリンターは動いているうちは何とも思われませんが、突然故障すると非常に困ってしまいます。突然故障して分かる、日常問題の発生しないことの素晴らしさと有り難み……これはちょっと的はずれな比喩かもしれませんが、仕事でも、いわゆる「縁の下の力持ち」のような仕事が陽の目をみて、多くの人が自分の仕事に誇りを持てる世の中になっていくとよいですね。