あなたのSNS、大丈夫?

カテゴリ: 今月のヒヤリ

巷でよく言われることに、昭和時代と比較すると現代は人間関係が希薄になって
いる社会であるという言説があります。いわゆる「無縁社会」や孤立した老人、若
者の未婚率の上昇は社会問題としてよく語られています。皆さんも「人付き合いに
疲れた」「結婚は面倒だ」といったことを考えたことがあるのではないでしょう
か。いずれにせよ、「現代の人間関係は昔と比べて希薄だ」という言説は一般に肯
定的に受け止められているようです。

 

確かに、昔と比べるとご近所付き合いも減り、会社の同僚と飲みに行ったり、会
社の行事に参加したりするといった機会に若い人が参加しなくなったような印象を
受けます。その一方で、若い人は私生活の豊かさをより重視するようになってきて
いるのかもしれません。思うに、充実した私生活を送る中で、身近な親しい人々の
間とは密に連絡を取り合ったり、趣味や目的が合う他人と親しくなったりするな
ど、「広く浅い人間関係」よりもプライベートに特化した「狭く深い人間関係」を
重視する考え方にシフトしていると思われます。そして、その考え方が要請し、或
いはそうした考え方を形作っているツールとして、twitterやfacebook、tumblrや
vineなどの
「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」、いわゆる「SNS」が非常に重要な
役割を占めているのではないでしょうか。

 

今日のテーマは「SNS」です。皆さんの多くもSNSを利用されているのではない
でしょうか。使い方は人それぞれだと思いますが、実生活で仲の良い人々とネット
上で繋がったり、趣味の仲間を見つけたりするために利用されているかもしれませ
ん。または、現実では知り合いには言えないような秘密の趣味や関心を共有するた
めに利用されている方もいるでしょう。このようにSNSの楽しみ方は人それぞれあ
りますが、場合によっては秘密の漏洩や不適切な発言により、企業の損失に繋がる
ような重大なセキュリティ事故を引き起こす危険性も孕んでいます。

 

個人的な話で恐縮ですが、私は弊社に入る前にあるショッピングモールのカフェ
でアルバイトをしておりました。ある日、そのショッピングモールでテレビドラマ
の撮影があり、有名俳優の方々が来られることが従業員に周知されることがありま
した。一部の方にとっては喜ばしい事態でついつい他人に話したくなると思います
が、管理者からはこう厳命されました。「関係者以外には口外しないでください。
特に、SNS等で言及することは絶対にしないでください。」

 

さて、SNSでもし「有名人が来る!」と情報を暴露したらどうなるのでしょう
か。恐らくファンが大勢来て、ドラマの撮影に支障が出ることもあるでしょう。そ
して、情報を漏らすような人がいる場所はもう撮影場所として使ってもらえなくな
るかもしれません。ドラマ撮影にも支障が出て、その上提供側としてもビジネス機
会を損失してしまいます。また、もし有名人が来店し、有名人が何を注文して何を
会話していたかを暴露したら、それはプライバシーの侵害となります。そこで更に
有名人に対して中傷でもしたら……ネットで「炎上」し、場合によっては、勤務し
ている企業のイメージを著しく悪化させることにもなります。

 

こうしたことは私の想像ではなく、実際にこうしたセキュリティ事故は起きてい
ます。例えば、某銀行に勤務する銀行員が子供に有名アイドルの個人情報を漏ら
し、子供がtwitter上でその情報を暴露したという事件があります。この件に関して
銀行側は公式に謝罪するに至りました。また、twitter上で広報宣伝活動を行う某書
店の公式アカウントが特定の主張を支持するかのような発言を行い、「ヘイトスピ
ーチを支持するのか」等の批判を浴びました。この件に関しても、書店側は公式に
謝罪することに至ります。

 

いずれの事例も、SNSで発言することは「理論上全世界に公開されること」であ
るということを深く考えず、軽々しく秘密を暴露したり、個人の主張を企業の公式
見解のように見せたりすることで、多数の批判や非難を浴び、秘密を暴露された被
害者の方が損害を被るのは勿論、企業側はイメージが悪化し、関係者に対する謝罪
対応に追われることになります。個人でSNSを利用するにせよ、広報活動の一環と
して公式アカウントを作るにせよ、一歩間違えると重大なリスクを背負うことにな
るのです。そしてそれはネット上で全国的に知られて半永久的に残ることになり、
個人は今度は自身の個人情報が特定されるかもしれませんし、企業は一度被った汚
名を返上するのには長い時間が掛かるかもしれません。

 

しかし、SNSは使い方さえ誤らなければ現代の人間関係を形作る上で非常に有用
なツールですし、SNSにアップされた画像や映像が世間の話題を席巻するようにさ
えなりました。もはや従来のメディアと別な、新世代のメディアになっているとも
言えるかもしれません。しかし、情報の発信には必ず責任が伴います。情報を発信
するという点で、当ブログも文責を以て書いております。上記のリスクを踏まえ
て、他者への損害は勿論、自分自身の身を守るためにも正しい運用を心がけるよう
にしましょう。